緒形拳 風のガーデン
緒形拳が風のガーデンで演じるのは、主人公白鳥貞美(中井貴一)の父、白鳥貞三73才。
かつては神の手と言われ大学病院の外科部長でありながら、現在は富良野で訪問医を営んでいます。
フジテレビ開局50周年記念ドラマ木曜劇場「風のガーデン」は脚本家・倉本聰の富良野三部作の最終章として製作されました。
緒形拳と風のガーデン
麻酔学界の権威として名を挙げた貞美は、次から次へと女を作る。貞美の妻、冴子は、その女性遍歴に耐え切れず、二人の子供(ルイと丘)を連れ、富良野の貞三の元へ身を寄せる。
様々な花が自由に咲くブリティッシュスタイルのガーデン「風のガーデン」を育みながらも、精神を病んだ冴子はやがて貞三の元にルイ(黒木メイサ)と丘(神木隆之介)を残し、自ら命を絶ってしまう。
冴子を追い詰めた貞美を許すことができない貞三は、貞美を勘当し、ルイと丘を貞三=緒形拳が風のガーデンで一人で育てている。と言う設定です。
緒形拳の風のガーデン
堅物で真面目と自他共に認める緒形拳が風のガーデンで演じた白鳥貞三は、奇しくも自らの年齢とほとんど同じです。
これは緒形拳を風のガーデンに起用するにあたりリアリティを追求することで有名な脚本家・倉本聰がわざと設定したといえるのかもしれませんね。
しかし、緒形拳が風のガーデンで演じる白鳥貞三の子供として主人公の白鳥貞美が、死期の迫った患者を楽にする緩和医療のエキスパートという設定は、緒形拳が風のガーデンのクランクアップを待つように肝癌によって逝去するに到っては皮肉な偶然と言わざるを得ません。
たしかに、緒形拳は風のガーデンの中では死なず、終末医療に従事する白鳥貞美自身が、末期癌に犯されているという設定ではあるのですが・・・。
緒形拳 風のガーデンの題字
書家としても名を持つ緒形拳は風のガーデンの台本の題字も書いていたそうです。これは、脚本家・倉本聰が緒形拳に風のガーデンの題字を依頼したというエピソードを緒形拳が風のガーデンの完成記者会見で明かしていました。
秀逸な演技と圧倒的な存在感を、誰もが認める緒形拳は「自分は舞台役者」というのが口癖のようでした。
緒形拳自身と家族のみに秘められた肝癌という病状を役者稼業が損なわれると10年近くも手術を受けず、投薬治療を受けながらも関係者の誰一人に悟られることもなく過ごしたと言うことには舌を巻きます。
NHKの大河ドラマ「太閤記」の豊臣秀吉、おなじく「源義経」の弁慶、「必殺仕掛人」の藤枝梅安、「八甲田山」の村山伍長、「復讐するは我にあり」の榎津巌、枚挙に暇のない役者稼業でした。
1999年、肝癌と分かってからだけでもテレビドラマは言うにおよばず、「流★星」に始まり「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」まで10本以上15本近くの映画にも出演してきているはずですし、舞台も続けていました。
そんな緒形拳は風のガーデンが、ついに遺作となってしまいました。
9月30日という死の5日前まで係わっておきながら、その病状をなんら係わった誰一人に見破られることなく、文字通り緒形拳を演じきって逝ったのでした。